果てしなき需要創造へのチャレンジの軌跡
僕達のもう一つのプロジェクト”X”
(第4巻第3号) 
●平成元年(1989)発売(その3)
一筋縄では行かなかった発売認可。
いわば薬でいうと新薬の開発に相当するこの製品の開発は殺生与奪を握る厚生省の許可を如何に取るかに掛かっている。幸い臨床試験には筑波大学、及び東京大学等が引き受けてくれることになった。
実はこのパナコラン、冒頭紹介したごとくテニスエルボや関節痛、筋肉痛など所謂、筋肉や関節の痛みなどの解消になんでも効くのだが、前述の通り薬事法規制をクリアーしようとするとその有効性を症例一つづつ証明していくしかない。そこで症例には最も困っている人の多い肩こりを選んだ。これにはテストに協力してくれる患者が必要人数を確保できるかどうかという点からもこれに絞らざるを得ないという事情やそうして市場を大きく作ろうという狙いもあった。
テストはダブルブラインドテスト(二重盲検法と言って実際に動作して効くサンプルと全く形はおなじだが動作しない効かないサンプルの2種類を作り、どちらかわからないようにして被験者に渡し、一定期間試験を行い、改善がみられたかどうかを評価する。
これは効くサンプルを渡された患者が効かないと言ったら有効性はないということになる、と同時に動作しないサンプルを使った患者が効くと言ったらそれは暗示的な効果しかないというわけである。つまり単純な評価よりも厳しいわけである。しかし僕はこのダブルブラインドテストは問題にはしていなかった。何故なら当初から僕自身がダブルブラインドテストを経験していたからその結果には自信があったのである。

しかし本当は期待した結果が得られるかどうかには不安もあった。何故なら病院に集まる被験者は他のどんな家庭療法でも治癒せず専門病院に駆け込んだ重症または慢性患者である。もともとわれわれは専門医療器具としてこういう痛み緩解製品を作ろうとしているのではない。単に日常生活における苦痛を和らげようというのである。しかし規定に則ってやろうとするとそういう手段を取らざるを得なかったのだ。
われわれのもともとの狙いはことペインクリニックに関しては日頃の痛み緩和こそ意味があると考えていた。筋肉痛などの痛み治療ではどんな薬効も一時的にしか効かず、根本的に根治することは困難である。しかもその間の経費も馬鹿にならない。そこへ行くと後にパナコランと命名されたこの理学的治療器具は電池さえ充電しておれば装着しいるだけで痛みをすっかり忘れさせてくれる。しかも症状を悪化させる弊害もない。まさにパナコランは身体にやさしく、持続性があり経済的でもあるのである。
幸い臨床結果は計画から約半年を経て極めて良好な結果を得た。100%効くという結果ではなく、結果に満足されない患者も居たことは事実だが、みんながこれで治ってしまったら病院は要らなくなる。どんな専門的治療も100%効くことはない、人は千差万別ということも知った。ある専門医は言った。薬の世界では30%の人に効く薬があれば大変なもので、抗ガン剤の中には数%しか効かないが薬として認められているものもあるという。ただ僕は1%でも効かない人がいる事実を重く受け止め、これを販売する上で治療器具とはこうした特性を持つものであり、その本質を見失えば必ず重大なトラブルを生じて商売は成り立たなくなるものであることを肝に命じた。

こうして効能は臨床試験で証明され、学会にも発表されたが、それでも薬事審議会、及び厚生省はOKを出さなかった。そのうち社内でも資金支出を認めた藤井社長からもいつ厚生省の許可が下りるのかとまるで見当のつかない納期約束を迫られ、苦し紛れにあと半年といい加減に答えていたら、君は社長に嘘ばかりついて約束を守らないとんでもないやつだと顔を合わす度に叱られ、全社会議の満座で悪い例え話に引き出されたり何とも居心地の悪い状況になっていった。しかし時間は掛かったが刻々僕には現場から小さな嬉しい知らせが届いていた。それにこの新しい治療器は効く、そのことはもう間違いはない事実となっていた。こうした支えがなければとても社内の非難を退けることはできなかっただろうと思うが、僕にはこうした非難は雑音としか映らなかった。
そうこうするうち、厚生省からは更に臨床試験で効くというが、何故効くのかその作用機序を立証せよ、というまさに難題が降りかかってきたのである。

次号に続く
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